HPV感染症に限らずおかしいなと感じたら検査が必要
- ①ヒトパピローマウイルス感染症の種類のなかには、子宮頸がんや尖圭コンジローマを発症してしまう種類もあります。
- ②感染前にワクチンを接種することにより発症リスクを軽減することができますが、全てのヒトパピローマウイルスに有効な訳ではありません。
- ③ヒトパピローマウイルス自体の対策方法や治療法はありませんが、おかしいなと感じたらできるだけ早い検査がおすすめです。
性病の一種ですが、クラミジアや淋病などに比べると、あまり知名度はないかもしれません。
そこで今回はヒトパピローマウイルスについて解説します。
気になる症状や治療法、性病検査の方法などを紹介するので、性病かもしれないと気にしている方は参考にしてください。
ヒトパピローマウイルス感染症は、ヒトパピローマウイルスというウイルスに感染することで発症します。
感染すると、子宮頸がん・咽頭がん・腟がん・肛門がんや尖圭コンジローマなどを発症してしまう病気です。
ヒトパピローマウイルスは100種類位以上あると言われており、どの種類のヒトパピローマウイルスに感染するかによって発症する病気は異なります。
例えば子宮頸がんの原因となる種類は少なくても15種類以上、そのうちHPV16型と18型への感染が日本における子宮頸がんの原因の50〜70%を占めています。
毎年約3,500人以上が子宮頸がんによって残念ながら命を落としています。
子宮頸がんの原因となりやすいHPV16型と18型は、感染予防のワクチンがあるため、ワクチン接種で対策ができます。
ヒトパピローマウイルスは主に性行為によって感染するウイルスです。
女性の50%は一生のうちに一度は感染すると言われています。
この全てが性行為による感染ではなく、皮膚の接触でも感染してしまうことがあるようです。
ただし、ヒトパピローマウイルスに感染しても、ほとんどの場合は数カ月で自然に消失します。
自然消失せずに感染状態が持続してしまった場合、子宮頸がんに進行してしまうのです。
ヒトパピローマウイルス感染症は女性の50%が一生に一度は感染すると言われている(高リスク型HPVの場合)、誰でも感染する可能性のある病気です。
どんな症状があるのか知っておきましょう。
■症状
ヒトパピローマウイルス感染症に感染した場合でも、初期症状がないことがほとんどです。
症状が出る場合は、生理以外の出血や性行為による出血、おりものの増加などが代表的な症状です。
進行すると、尿に血が混ざるだけでなく、脚や腰、骨盤、背中などに痛みを感じることもあります。
ただし、先述したとおり、ほとんどの人は感染しても気付かないまま自然に治癒する感染症です。
ただ感染した人のうち、10%の人はガンではない何らかの異常が見られ、4%の人は前ガン状態になると言われています。
前ガン状態になったとしても、自然に元に戻る人が多いと言われていますが、そのまま子宮頸がんや他のガンを発症してしまう可能性もあります。
何らかの異変を感じたら、できるだけ早く性病検査を行うようにしましょう。
■進行した場合の症状
ヒトパピローマウイルス感染症のうち、HPV16型と18型に感染して前ガン状態から症状が進行すると、子宮頸がんを発症します。
最初は子宮頸部の表面にガンができる上皮内ガンを発症し、そこからさらに進行した状態で、ガンが組織に入り込んで浸潤ガンを発症する可能性があります。
浸潤ガンが進行すると、徐々にガンが子宮頸部を超えて広がっていき、骨盤壁や膣壁に達して最終的には膀胱や直腸粘膜を侵し、小骨盤腔を超えて広がっていくこともあります。
子宮頸がんを発症しても、早期段階では自覚症状はありません。
腫瘍が大きくなっていくにつれて、生理以外の不正出血があったりおりものが増えたりします。
発症している場合、出血のなかでも特に性行為時の出血は、腫瘍が原因となっている可能性が高いようです。
ヒトパピローマウイルス感染症のうち、HPV6型や11型に感染すると、尖圭コンジローマを発症します。
尖圭コンジローマは性器や肛門の周辺にイボができるのが症状です。
女性の場合は膣内にイボができることもありますが、イボができてもかゆみや痛みは感じません。
最初は小さく尖ったイボができるのが一般的ですが、そのまま放置しておくとイボが増えたり大きくなったりします。
イボがたくさんできてイボ同士がくっつくと、最終的にはカリフラワーのような大きなイボになってしまうのです。
尖圭コンジローマは痛みや痒みを感じないため、小さなイボができても最初は気付かない人も多いです。
また女性の場合で膣内にイボができた場合も、なかなか気付かない人が多いでしょう。
しかしそのまま性行為をすればパートナーに感染させてしまう可能性があります。
ヒトパピローマウイルス感染症に感染しても初期症状がほとんどないため、多くの人が気付きません。
また、感染したとしてもほとんどの場合は自然に完治するのでヒトパピローマウイルス感染症の治療は行いません。
ただ子宮頸がんを発症した場合は、早期であれば子宮頸部を切除しての手術を行う必要があり、ガンがかなり進行している場合は、子宮を摘出する必要があります。
また、ガンがかなり広がっている場合は、抗がん剤治療や放射線治療が必要となってくるでしょう。
尖圭コンジローマを発症した場合は外科的治療と薬物による治療を行います。
外科的治療を行う場合は、レーザーや電気メスによる焼却や、液体窒素による凍結が一般的です。
薬物で治療を行う場合は、軟膏を使って治療を行います。
ただ、尖圭コンジローマは治療を行っても、体内から完全にウイルスを取り除けるわけではありません。
ウイルスは潜伏したままなので、治療を行っても何度も再発する可能性があります。再発するリスクは3カ月以内で25%です。
ヒトパピローマウイルスの性病検査と治療薬について紹介します。
■ヒトパピローマウイルスの性病検査
ヒトパピローマウイルスは200種類以上ありますが、GMEの性病検査でできるのは高リスク型のヒトパピローマウイルスに対してです。
子宮頸がんを発症する可能性がある13種類の検査ができる方法として、グループ検査と型判定検査の2種類があり、どちらも子宮頸部から細胞を採取して検査を行います。
子宮頸がん検査としては、同じく子宮頸部の細胞を採取して行う細胞診もあります。
こちらはがん細胞だけでなく、進行し始めの前がん状態の細胞も発見できる検査です。
どちらも子宮頸部の細胞を採取して行うため、同じ細胞を利用して同時に検査もできます。
尖圭コンジローマの疑いがある場合は、医師による視診検査が一般的です。
別途、検査費用はかからず、視診のみで尖圭コンジローマと診断できれば治療に進みます。
視診以外には、患部の組織を採取し顕微鏡で細胞の状態を調べる病理検査やウイルスの遺伝子が存在しているかを調べる遺伝子検査などがあります。
■ヒトパピローマウイルスの治療薬
先述したとおり、ヒトパピローマウイルス自体を治療する治療薬は現在のところありません。
子宮頸がんやその他のガン、尖圭コンジローマを発症していた場合は、それぞれの方法で治療を行います。
子宮頸がんを発症している場合で早期段階であれば、投薬による治療ではなくガンを切除する手術になります。
進行して切除ができない場合は、抗がん剤による治療か放射線による治療です。
尖圭コンジローマで薬を使って治療する場合は、イミキモドクリームという軟膏を使用します。
このクリームを週に3回イボやイボの周辺に塗布することで、ウイルスの増殖が抑えられる薬です。
治療期間は個人差がありますが、目安となるのは16週間です。
低リスクなヒトパピローマウイルスから高リスクなヒトパピローマウイルスまでさまざまな種類がありますが、全てのヒトパピローマウイルスを対策する方法はありません。
性行為で感染してしまう恐れがあるので、コンドームは使用するようにしましょう。
ただ皮膚接触でも感染することがあるので、コンドームを使用するからといって完全にヒトパピローマウイルスを対策することはできません。
ただし、ヒトパピローマウイルスのなかでも子宮頸がんを発症する可能性がある16型と18型の高リスクHPVと、尖圭コンジローマを発症する可能性がある6型と11型の低リスクHPVはワクチンによって対策できます。
16型と18型のみを対策するワクチンは2価ワクチン・サーバリックス、16型と18型に加えて6型と11型を対策するワクチンは4価ワクチン・ガーダシルです。
これらは12~16歳(小学校6年生から高校1年相当)まで定期接種として定められているワクチンで、対象年齢であれば3回無料で接種できます。