- ①風邪の症状に似ている
- ②のどから性器にも感染する
- ③中咽頭がん発症原因の60%がHPV感染によるもの
- ④中咽頭がんは40代~50代の男性に多い
性病は性器や尿道に感染すると思われがちですが、実はのどにも感染するものがあります。のどに感染した場合、風邪とよく似た症状が現れるため、性病だと気づかない場合があります。今回は『のど』に感染する性病について解説していきます。
性病かもしれないのどの症状
のどに感染する代表的な性病は『クラミジア』や『淋菌』です。
それ以外にも『ヒトパピローマウイルス(6型や11型のHPV)』『梅毒』『ヘルペス』『HIV』『マイコプラズマ』『ウレアプラズマ』なども、性行為でのどに感染します。
性病によるのどの症状は無症状であることも多く、症状が出ても、のどの腫れ・痛み・発熱・発赤など、普通の風邪と変わりません。悪化すると咽頭炎や扁桃腺炎などを引き起こすこともあります。
HPVの中でも6型や11型のHPVが口の中に感染すると尖圭コンジローマを引き起こすことがあります。症状は性器の時と同様に先端が尖ったイボができます。痛みや痒みを感じることは少なく気づきにくいです。
梅毒の場合は、口の中に痛みのないしこりができることがありますが、このしこりは梅毒の第一期の症状であり、治療しなくても自然に消えてしまいます。病気が治ったわけではなく、引き続き梅毒が進行している状態ですが、一過性の症状だと思い込み、見過ごしがちです。
性病が原因ののどの症状は、放置したり、市販薬を飲んでも治りません。
症状が現れる一ヵ月以内に性行為をしている場合、性器にもなんらかの症状がある場合、なかなか治らない場合は、性感染症の可能性を疑い検査を受けましょう。
こんな行為で感染します
のどの性感染症は、感染者の尿道分泌物や腟分泌物、唾液が、咽頭粘膜に接触することで起こります。
感染している人とのディープキスやオーラルセックスが主な原因です。ディープキスでの感染率は高くないですが、口腔内にヘルペスや梅毒の病変がある場合、感染の危険性が増加します。
のどの性病に感染した状態でオーラルセックスを行うと、性器へ感染することもあります。のどから性器へ、性器からのどへ、部位を変えて感染し続けることもよくあります。
感染しても無症状の場合や感染に気づいていない潜伏期間に、パートナーにうつしてしまうこともあります。治療を受けて完治したあとに、感染していたパートナーからまた病気をうつされるという『ピンポン感染』も起こりやすいです。
淋菌やクラミジアは一度感染しても中和抗体ができないため、何度でも繰り返し感染する可能性があります。感染がわかったときは、パートナーと一緒に検査、治療をうけることが大事です。
のどの性病の予防方法と治療について
◎のどの性病を予防するには?
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①コンドームを正しく使用する
性行為の最初から最後までコンドームを着用することで、体液に触れる機会を減らし、感染を予防できます。
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②パートナーを限定する
不特定多数の人と性交渉の機会を持つほど、感染のリスクが高まります。特定のパートナーとの性行為は、感染した場合の履歴もすぐにわかり、同時に検査と治療が受けられる為、再感染のリスクを防ぐことができます。
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③セックス後は清潔を心がける
体液のついた手指が口や目の粘膜に触れないように、行為後はシャワーを浴びたり手を洗ったりして清潔にしましょう。
◎のどの性病の治療について
原因となるウイルスや菌に対する薬物療法が基本となります。クラミジアは抗生物質を服用、淋病は抗生物質の点滴でほとんどの人が治癒します。
その他ののどに感染する性病も薬物治療が第一選択ですが、6型又は11型のHPVが原因の尖圭コンジローマではウイルスに対する治療薬はなく、イボの除去を目的とした外科的治療や薬物療法をします。
HPV(16型など)による中咽頭がんの患者が増加しています!
近年、中咽頭がんの患者が増加しています
一見、性病とは無関係に思われますが、実は中咽頭がんの60%は、性行為で感染する『高リスク型ヒトパピローマウイルス(HPV)』が原因です。たくさんの種類があるHPVですが、その中でもHPV16型が大きく関与しています。
高リスク型HPV陽性者の中咽頭がんは、40〜50代の男性に多く、患者の若年化と女性患者の増加がみられます。その原因は、セックスパートナーの数が増えたり、オーラルセックスの頻度が増えるなど、性の多様化にあるといわれています。
高リスク型HPV陽性患者では、中咽頭がんのリスクが16倍高いと言われ、本来の中咽頭がんのリスク因子だった飲酒や喫煙は、高リスク型HPV感染患者の中咽頭がんリスクをさらに高めます。
◎症状
・咽頭痛
・嚥下困難や痛み
・構音障害(音を作る器官やその動きに問題があって発音がうまくできない状態[※1])
・頸部の嚢胞性腫瘤
・耳の痛み
などです。一般的な風邪症状に似ているため、中咽頭がんが発見されるまで時間がかかることもあります。
◎予後
中咽頭がん全体の5年生存率は60%ですが、高リスク型HPV陽性者に限ると75%となります。高リスク型HPV陽性者の生存率が良好な理由としては、化学放射線療法の感受性が良いこと、若年層に多く体力があることなどが影響しています。
◎治療
①外科的手術
外科的手術では、がんを直接切除します。
がんが進行している場合は、首を切開して腫瘍を取り除く従来の外科手術を行いますが、がんが表層部に限定されるときなどは、合併症が少ない経口レーザー手術や、より緻密な手技が可能な経口的ロボット支援手術が選択されるようになりました。
中咽頭がんでは、高確率で頸部リンパ節への転移がみられるため、リンパ節郭清(リンパ節と周辺組織の切除)も同時に実施されることが多いです。
がんが大きく、切除部位が広範囲だった場合、嚥下や構音機能に大きな後遺症を残すことがあります。その場合、QOLを考慮して失われた機能を補う再建手術が行われます。
②化学放射線療法
抗がん剤治療と放射線療法を組み合わせた治療です。手術と組み合わせて行うこともあります。
HPV陽性者では化学放射線療法の治療効果がとても良いことがわかっています。
頸部と中咽頭がんの部分に放射線を照射し、がん細胞内のDNAにダメージを与え、がん細胞を破壊します。がん周辺の正常細胞も少なからずダメージを受けますが、正常細胞であれば自己修復します。抗がん剤治療を合わせて実施した場合、副作用も強くなることが多いです。
性行為後に喉に違和感があったり、症状がなかなか治らない時はパートナーと一緒に性病の検査を受けてみましょう