- ①ピルは生理痛・PMSの緩和や肌荒れの緩和に効果的
- ②卵巣がん・子宮体がんの予防になる
- ③性病は予防できない
- ④人によっては副作用が出る場合もある
そもそもピルとは、女性ホルモンの成分が含まれた経口避妊薬のことですが、避妊以外にも女性に嬉しい多くの効果があります。今回は、ピルに対してあまりよいイメージを持っていない方でも、正しい知識を身につけて生活に役立てられるよう、ピルについて解説していきます。
ピルの種類
ピルは、含まれる女性ホルモンの種類や量によって超低用量ピル・低用量ピル・中用量ピル・アフターピルなどに分けられ、呼び方・効果が異なります。超低用量ピル・低用量ピル・中用量ピルは普段から服用することで妊娠を予防しますが、アフターピルは避妊に失敗してしまったり性犯罪に巻き込まれてしまった後に服用することで緊急的に妊娠を阻止します。飲むタイミングと目的が異なるのが特徴です。
ピルの種類 | 女性ホルモン(エストロゲン)の量 | 主な目的 |
超低用量ピル | 少 | 月経困難症、子宮内膜症の治療 |
低用量ピル | 中 | 避妊、生理痛・生理不順・PMS改善 |
中用量ピル | 多 | 月経移動 |
アフターピル | ― | 緊急避妊薬 |
また、避妊やPMS・肌荒れの改善を目的に低用量ピルを利用する場合には保険適用外の処方となります。しかし、月経困難症や子宮内膜症の治療で使用する場合には保険適用内での処方が可能です。
このようにいくつかの種類がありますが、今回は「低用量ピル」についてご紹介します。
ピルの避妊率について
避妊には、ピルのほかにコンドームやIUS(子宮内避妊システム、ミレーナ)、IUD(子宮内避妊具)、リズム法や避妊手術といった方法があります。
次の表は、それぞれの避妊法を1年間用いた場合の避妊の失敗率(妊娠率)を表しています。
理想的な使用は、選んだ避妊法を正しく続けて使用しているにもかかわらず妊娠してしまった場合を示し、一般的な使用は選んだ避妊法を使用しているにもかかわらず妊娠してしまった場合(ピルは飲み忘れも含む)を示しています。
方法 | 理想的な使用 (%) |
一般的な使用 (%) |
低用量ピル | 0.3 | 9 |
コンドーム | 2 | 18 |
リズム法 | 0.4~5 | 24 |
IUS(子宮内避妊システム、ミレーナ) | 0.2 | 0.2 |
IUD(子宮内避妊具) | 0.6 | 0.8 |
女性避妊手術 | 0.5 | 0.5 |
男性避妊手術 | 0.10 | 0.15 |
避妊せず | 85 | 85 |
マーベロン服用者向け情報提供試資料:https://pharma-navi.bayer.jp/sites/g/files/vrxlpx9646/files/2020-12/TRQ180901.pdf
ピルの避妊率は、理想的に服用できた場合では99.7%、飲み忘れてしまっても91%であり、コンドームやリズム法と比較して高い避妊効果があるといえます。また、避妊手術やIUS・IUDと匹敵した避妊効果が得られますが、これらの方法よりも簡便で手軽に取り入れやすい避妊方法です。
避妊以外にもこんなメリットがあります
それでは、ピルの避妊以外のメリットについてみていきましょう。ここでは主に5つ紹介していきたいと思います。
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1. 生理痛、生理不順、子宮内膜症の改善
ピルを飲むことで、子宮内膜の肥厚が抑えられます。その結果、月経の出血量の減少、生理痛の軽減・消失へとつながると考えられています。
また、偽妊娠状態となり、排卵が抑制されるため、排卵痛も起こらなくなります。 -
2. PMSの改善
PMSの定義は、「月経前の3~10日の間続く精神的あるいは身体的症状で、月経開始とともに軽快ないし消失するもの」とされています。[注1]イライラしたり不安感に襲われたり、むくんだり頭痛がしたり、集中力の低下や食欲が止まらなくなったりと様々な症状がみられます。
排卵から月経が起こるまでの間に、女性ホルモンが急激に変化することで脳内のホルモンや神経伝達物質が変動することが原因と言われています。
ピルを服用していると、女性ホルモンの変動が抑えられるため、PMSの改善効果があると考えられています。 -
3. ニキビ・肌荒れの改善
ニキビや肌荒れが生理前後に起こる理由のひとつは、ホルモンバランスの乱れです。特に卵巣から分泌されるテストステロンという男性ホルモンがニキビや肌荒れを起こす要因として考えられています。
ピルには、テストステロンの分泌を抑えたり、ホルモンバランスの乱れを整える作用があるため、生理前後のニキビや肌荒れに効果があるとされています。[注2] -
4. 卵巣がん・子宮体がんの予防
ピルを服用していると排卵が抑制されるため卵巣のダメージを防げたり、性腺刺激ホルモンであるゴナドトロピンにさらされることが減るため、卵巣がんが発生するリスクを下げられます。
卵巣がんは、ピルの内服を5年継続で約30%、10年継続では約40%、15年継続で約50%のリスクが低下することが報告されています。また、内服を中止した後も15年までリスクの低下が持続するという報告もあります。
また、ピルの使用により子宮体がんにかかるリスクが50%低下するともいわれています。子宮体がんによって死亡するリスクも低下し、使用を中止した10年後まで持続するという報告もあります。[注3]クリニックフォア利用者向け資料より
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5.生理をコントロールできる
旅行やスポーツの大会・試験などの大切なイベントと生理が重なりそうな場合、ピルによって月経を移動することができます。早めるか、遅らせるかの2つの方法があり、基本的には中用量ピルを利用します。
事前に予定が分かっているのであれば低用量ピルで早めることができ、イベントの最中にピルを飲むことも副作用を気にする必要もありません。
[注2]クリニックフォアhttps://www.clinicfor.life/telemedicine/pill/effects/b-035/
[注3]日本産科婦人科学会「低用量経口避妊薬(OC)に関するガイドライン」
ピルを飲んでいても生理はあるの?
まず、結論としてあります!
ただし、生理とは異なるメカニズムの出血になります。
ピルには、21錠タイプと28錠タイプがあり、21錠タイプでは錠剤を飲まない期間、28錠タイプでは有効成分が含まれていない錠剤(偽薬・プラセボ)を飲む期間に入ってから2~4日後に子宮内膜が剥がれ、出血が生じます。
ピルの服用中には生理は現れず、この休薬期間・プラセボ服用期間に生理がくるというサイクルができるため、生理周期を安定させることができるのです。また、ピルによって子宮内膜を増殖させる働きをもつエストロゲンの分泌が抑えられて、排卵が止まります。
これにより、通常よりも 子宮内膜が厚くならずに経血量が少なくなり、同時に生理期間も短くなります。[注4]
ピルの服用で注意すること
ピルについて、少しでも知識を深めていただけたでしょうか?
今回、紹介してきたメリットは、女性の生活をより良くしてくれるものばかりだと思います。そもそも、ピルは健康な女性が長期間にわたって服用することを前提として開発されていることもあり、安全性の高いお薬とされています。しかし、薬剤のひとつであるため、服用できる条件や副作用・注意点などがあります。
1.ピルでは性感染症を予防できません
性感染症の予防のためには、コンドームを使用して粘膜や体液などの直接の接触を避けましょう。定期的に性病の検査を行うこともおすすめします。
2.副作用があります
個人差はありますが、ピルを飲み始めてから体が慣れるまでの1~3か月間は、吐き気や不正出血・頭痛・乳房のハリなどの不調が現れることがあります。
多くの場合、内服しているうちになくなりますが、なかなか改善しないときにはピルの種類を変更することで消えることもあります。
また、重大な副作用として血栓症があります。血栓症とは、血液のかたまり(血栓)ができて血管に詰まってしまう病気です。ピルを飲み始めてから1年間は、血栓症になるリスクが高くなるという報告があります。胸の鋭い痛みや激しい頭痛、ふくらはぎの痛み・むくみなどの症状が現れた場合は、すぐにお近くの医療機関を受診してください。
3.次の条件に当てはまる方は服用できません
・35歳以上で15本以上/日 喫煙する
・高血圧 収縮期血圧:160mmHg以上または拡張期血圧:100mmHg以上
・過去2週間以内に手術を受けた または 今後1か月以内に手術の予定がある
・目の前がキラキラするなどの前兆のある片頭痛がある
・血栓を起こす病気と診断された
・乳がんや子宮体癌の疾患がある
・「妊娠中」「妊娠している可能性がある」「授乳中」である
・出産後1か月以内である
・妊娠中に黄疸、ヘルペス、持続性掻痒症と診断されたことがある
こういった方の場合は、ピルを飲むメリットよりもリスクのほうが大きいため、他の方法で避妊やPMSを対応しましょう。[注5]
4.飲み合わせに注意
セントジョーンズワートはピルの効果を弱めることが知られておりますので、併用は控えましょう。
ピルを服用したい時には
気になった方は、ぜひ一度 婦人科を受診して医師に相談してみましょう。また、現在ではオンラインでのピル処方も普及してきています。そこでもきちんと医師に相談ができるので、病院まで行く時間がとれない方は、オンラインでの購入を検討してみるのはいかがでしょうか。
ただし副作用があったり、服用できる人の条件もあるため、始める際には医師に相談しましょう