GME医学検査研究所

【ウイルス性肝炎】とは?
種類や特徴、対策を紹介

いつもダルいし疲れが取れない...その症状、もしかしたら肝臓の病気かもしれません

身体にはさまざまな臓器が備わっていますが、なかでも肝臓は「沈黙の臓器」と言われるほど、悪化するまで自覚症状が現れないことで知られています。
そのため肝臓の異常に気付いたときには、深刻な状況に陥ってしまっている可能性があります。
本記事では、肝臓の異常を早めに把握するために知っておきたい、ウイルス性肝炎の特徴と対策を紹介します。

代表的なウイルス性肝炎は4つ

ウイルス肝炎はA型からE型まで、大きく5つに分けられます。
その中でも日本で感染する可能性があるものは、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、E型肝炎の4つです。
この4つの肝炎の違いは上の図のとおりです。
A型肝炎とE型肝炎は感染経路が食事からなのに対して、B型肝炎、C型肝炎は感染経路は血液もしくは体液となっています。

●A型肝炎

A型肝炎はA型肝炎ウイルス(HAV)に感染することで発症する肝炎で、上下水道が整備されていない衛生環境が悪い地域でみられます。
排泄物に混ざったHAVが人の手をとおり食べ物にうつるなどして、経口感染します。性交時に感染するケースもあります。

主な症状は発熱やだるさ、食欲不振などです。潜伏期間が2週間から7週間と長いため、旅行先で感染して帰宅後に発症する可能性もあります。[※1]

A型肝炎は子どもより成人のほうが症状が現れやすく、特に高齢者は重症化と死亡率が高くなる傾向にあります。
なお、症状がなくなってから数週間はウイルスが排泄物に混じっているため、家族をはじめほかの人にうつさないように気を付けましょう。


【A型肝炎の治療法】

A型肝炎の治療法はないため、症状に応じた治療を受けたら安静にしておくことが大切です。


【A型肝炎にかからないために】

A型肝炎にかからないためにも、衛生環境が良くない地域では生水や氷、生肉、生野菜を食べないようにしましょう。
このような地域で水を飲むのであればミネラルウォーターを、食事をするのであれば加熱した物を食べることでウイルスへの感染を防げます。

また、衛生環境が良くない地域に行く予定がわかっているのであれば、ワクチンを接種しておくことも大切です。 日本ではA型肝炎の予防接種を実施しているため、A型肝炎対策を講じるのであれば、予防接種を受けましょう。
A型肝炎のワクチンは2~4週間の間に2回打ち、そこから半年後に3回目を打つことで免疫が約5年維持できます。[※2]


[※1] [※2]出典:厚生労働省検疫所.「A型肝炎」.
https://www.forth.go.jp/useful/infectious/name/name01.html

●B型肝炎

B型肝炎はB型肝炎ウイルス(HBV)に感染することで起こる肝炎です。HBVは感染者の血を介して感染します。
また血液中のHBVが多い感染者の場合、体液を介しても感染してしまいます。主な症状は、全身の倦怠感や食欲不振、嘔吐などです。

B型肝炎の特徴として、一過性感染と持続性感染があります。
一過性感染とはB型肝炎に感染して数ヵ月後に身体がウイルスを排除して免疫ができた状態です。
一方、持続性感染は長期にわたりウイルスが肝臓内に住みついてしまってHBVキャリアになってしまった状態です。
持続感染者のうち10~15%の人が慢性肝炎を発症してしまいます。[※3]
慢性肝炎になった場合、必要な治療をせずに放置していると肝硬変や肝がんに進行してしまう恐れがあります。


【B型肝炎の治療法】

B型肝炎の治療法は急性とHBVキャリアとで異なります。
急性の場合、対症療法で多くの場合治癒します。一方、HBVキャリアの場合、肝炎の進行状況によって異なるため、医師との相談が必要です。


【B型肝炎にかからないために】

B型肝炎は血液もしくは体液から感染するため、次のような行動は避けるようにしましょう。
● 歯ブラシ、カミソリのように他人の血液が付いているかもしれない物は共有しない
● 他人の血液にはゴム手袋を着けてから触れる
● ピアスの穴は清潔な器具で開ける
● 性行為はコンドームを使用する

上記のとおり、B型肝炎への感染を防ぐには他人の血液や体液に直接触れることを避ける必要があります。
一方で、HBVに感染している人と食器を共用したり、一緒に入浴したりすることで感染をすることはないので、正しい知識に基づいた予防をしましょう。

また、A型肝炎と同様にワクチン接種で抗体を獲得できます。
B型肝炎のワクチンは合計3回接種する必要があり、抗体獲得率は40歳までに接種した場合で95%とされています。[※4]


[※3]出典:厚生労働省「B型肝炎について(一般的なQ&A)」.
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou09/01a.html
[※4]出典:熊本県「B型肝炎ワクチンの予防接種について」.
https://www.pref.kumamoto.jp/soshiki/30/4924.html

●C型肝炎

C型肝炎はC型肝炎ウイルス(HCV)に感染することによって発症する肝炎です。
B型肝炎同様、持続感染者になる可能性があり、その数はHCVに感染した人の約70%にも上るとされています。持続感染者になると肝硬変、肝がんへと進行してしまう恐れがあります。
感染経路はB型肝炎と同じく血液を介して感染します。
感染から約2~14週間の潜伏期間で急性の肝炎を引き起こすことがありますが、多くの人がウイルスを体内から排出できず、慢性肝炎化してしまいます。[※5]

C型肝炎の主な症状は体のだるさや疲れやすさ、食欲不振などです。


【C型肝炎の治療法】

C型肝炎の治療はHCVを排出することが目的で、2014年9月から飲み薬による治療がスタートしています。2014年9月以前はインターフェロンという注射針を用いた治療が主流でしたが、効果が不十分で副作用も多いため、飲み薬による治療に切り替えられました。
飲み薬による治療によって95%以上の人がHCVを体内から排出できています。[※6]


【C型肝炎にかからないために】

C型肝炎を予防するには、B型肝炎と同様で他人の血液に触れないようにしましょう。
また、B型肝炎同様、HCVに感染した人との食器共有や入浴などで感染することはありません。


[※5][※6]出典:国立研究開発法人 国立国際医療研究センター 肝炎情報センター「C型肝炎」
https://www.kanen.ncgm.go.jp/cont/010/c_gata.html

●E型肝炎

E型肝炎ははE型肝炎ウイルス(HEV)に感染することによって発症する肝炎です。A型肝炎同様、衛生状態の良くない地域で感染しやすい肝炎です。
感染経路は経口感染で、HEVが混じった排泄物で汚れてしまった飲食物を口にすることが原因です。
豚、鹿、イノシシはHEVを保有しているケースがあり、そういった動物のレバ刺しなどを食べることで感染してしまいます。
潜伏期間は2週間から9週間ほどで、主な症状は、A型肝炎同様、発熱や嘔吐、食欲不振などです。
症状はA型肝炎に似ていますが、致死率はA型肝炎よりも高いとされていて、とくに妊婦が感染してしまうと悪化しやすく、致死率は約20%ともいわれています。[※7]


【E型肝炎の治療法】

E型肝炎は急性期であれば入院して安静が求められます。


【E型肝炎にかからないために】

E型肝炎にかからないためには、衛生環境が整っていない地域での生食を避けたり、国内においても豚、鹿、イノシシの肉を食べる際はしっかりと加熱することが大切です。
なお、A型ウイルスのようなワクチンはE型肝炎にはありません。


[※7]出典:国立感染症研究所「E型肝炎とは」.
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/319-hepatitis-e-intro.html

肝硬変とは

B型肝炎、C型肝炎は、ウイルスが肝臓内に住みついてしまうと、肝炎が悪化して肝臓が硬くなる肝硬変になってしまいます。
例えば次のような症状がある場合、肝硬変の疑いがあります

肝硬変の疑いがある症状

● 体がむくんでいる
● 白目や皮膚が黄色くなる黄疸がある
● お腹に張りがある
● 手の平が赤くなっている
● 首や前頭部に赤い斑点ができる
● 倦怠感や疲労感、食欲不振が続いている
● 抜け毛が目立っている
● 尿の回数が増えたもしくは減った

肝硬変を放置していると、肝臓で分解できなくなった有害物質が血液に乗って脳に蓄積されてしまう肝性脳症や肝臓がんなどにつながってしまいます。

ウイルス性肝炎にかかっているかは検査で分かる

ウイルス性肝炎にかかっているかどうかは検査で分かります。
中でも、気付かぬうちに慢性化する可能性が高いB型肝炎、C型肝炎は、病院はもちろん自治体でも検査可能です。

病院で検査する場合、検査費用は自己負担となる可能性があるのに対して、検査を行っている自治体であれば無料で受けられます。

B型肝炎・C型肝炎は自宅でも検査可能

ウイルス性肝炎の検査を受けようにも、病院や自治体窓口に赴く時間がないという方は、自宅で受けられる検査キットを活用してみましょう。
ウイルス性肝炎の中でも、B型肝炎とC型肝炎は検査キットを用いれば自宅で簡単に検査可能です。

スマホで検査結果がすぐ分かる

病院で検査した場合、検査結果を聞きに再度病院に出向かなければなりません。
一方、検査キットであれば採取した検体を送れば後は結果を待つだけです。
検査キットのなかには、スマホで検査結果が分かるものもあるため、どこにいても検査結果を見ることができます。

組み合わせで他の病気も検査できる

検査キットは、さまざまな病気に対応しています。
B型肝炎、C型肝炎以外にも、胃がん(ピロリ菌)、肺がん、大腸がん、梅毒、性器クラミジアなどです。
そのためB型肝炎やC型肝炎以外にも、感染や症状が疑われる病気があれば併せて検査可能です。

ウイルス性肝炎のまとめ
疑わしい症状があれば早めに検査をして治療に取り組みましょう。
B型、C型肝炎は病院や自治体で検査可能ですが、忙しい方には検査キットでの検査がおすすめです。
検査キットであればどこにいても検査結果が分かるので、 陽性だったらすぐに病院を受診しましょう。