直腸炎まとめ
- ①直腸粘膜が淋菌・クラミジア感染によって炎症を起こす
- ②肛門を用いた性行為(アナルセックス)により感染
- ③性器の感染症の時と同様に無症状なことがほとんど
- ④直腸炎患者のHIV感染リスクは非感染者の4倍~6倍
非常に感染力が高く、日本で最も多い性感染症のクラミジアや淋菌によって引き起こされる直腸炎は、性器の感染症の時と同様に無症状なことがほとんどです。その為、知らず知らずのうちに大切なパートナーにも感染させてしまいます。
そのほかにも、直腸炎によりHIVなどの感染症に感染するリスクは4倍~6倍に高まります。
ここでは、性感染症が引き起こす直腸炎と、それに伴うリスクについて詳しく解説していきます。
直腸炎とは、直腸粘膜に炎症が起こることです。症状は排便時の疼痛あるいは違和感や、便中に粘液や膿、血液が混ざる場合があります。
淋菌によって炎症が引き起こされているものは淋菌性直腸炎、クラミジアによって引き起こされているものはクラミジア性直腸炎といわれています。
直腸の淋菌やクラミジアの感染症は共に殆ど自覚症状がない為、感染に気付きません。自覚症状がないままパートナーにも移してしまう可能性があります。
特に淋菌は、感染者との1回の性行為で感染する確率が30%と非常に高いので、注意が必要です。
淋菌性直腸炎の症状
直腸淋菌感染症は無症状のことも多いですが、膿性・血性の直腸分泌物、下痢、下腹部痛、肛門性交痛、肛門のかゆみや不快感などの症状が出ます。また、肛門陰窩を軽く押すと膿性粘液が排出されます。
これらは淋菌感染症に特徴的なものではないですが、痛みを伴う場合や、尿路や咽頭感染を伴っている場合には疑う必要があります。
クラミジア性直腸炎の症状
直腸クラミジア感染症の約70%は無症状ですが、症状があっても軽度の下痢や肛門症状にとどまることが多いです。
肉眼的所見として、直腸粘膜内のリンパ濾胞形成による光沢のある半球状小隆起の集簇が一般的で、イクラ状と表現されます。
また、丈の低い隆起や隆起を伴わないことも少なくなく、びらん・アフタ、発赤として確認できることもあります。
直腸炎の感染経路について
主な感染経路は、肛門を用いた性行為(アナルセックス)により感染します。
また、性器に感染したものがリンパ行性感染で直腸に感染する経路や、女性の場合では腟と肛門が近いこともあり腟分泌液が肛門に流れて直腸に感染する経路が考えられています。
性器のクラミジアや淋菌に感染している場合は、直腸への感染も疑ってみましょう。
直腸炎の治療について
クラミジア性直腸炎では性器クラミジア感染症の治療に、淋菌性直腸炎では性器淋菌感染症(淋病)の治療に準じて治療を行います。
※クラミジア性直腸炎に関しては、服用する薬剤によっては治療が不完全になることが報告されています。そのため、治療後2~3週間経過後に治癒確認検査をすることが望ましいです。
治癒率:アジスロマイシン―85%、ドキシサイクリン―94%[注1]
直腸炎の予防法について
直腸が精液に触れることで感染が起こりますので、コンドームを使用することにより予防することができます。コンドームは避妊具の役割と、性感染症の予防に効果がありますので、直腸を使った性行為でもコンドームを使用しましょう。
直腸にクラミジアや淋菌が感染しても無症状なことが多いですが、自然に治ることは基本的にありません。自身は無症状でもアナルセックスの相手に感染させてしまう可能性があります。
また、直腸部分は炎症が起こっており粘膜のバリア機能が更に弱くなっている状態ですので、HIVなど他の性感染症に感染しやすくなってしまいます。クラミジア感染者のHIV感染リスクは非感染者の4倍~6倍ともいわれています。
ただし、性器や咽頭の感染に気づいて治療された場合には、直腸感染も同時に治療できている可能性があります。
適切な治療をすれば、完治できる性感染症なので他の感染症への感染するリスクから自身とパートナーを守るためにも定期的に検査をしましょう。
病院にて直腸炎の診断をする際には、肛門性交の有無、抗菌薬の服用歴、放射線治療歴の有無、最近の食事内容、東南アジア地域への渡航歴などの問診を行い、病気を絞り込み治療方針を決定していきます。
必要に応じて触診や便培養検査、血液検査、大腸内視鏡検査などが行われます。
性感染症を疑った場合、内視鏡検査や血液検査や培養検査を行いますが、クラミジアや淋菌の遺伝子検査は保険診療では行われません。これは、直腸に対するクラミジアや淋菌の遺伝子検査が保険収載されていないからです。
つまり保険証を使って検査できないので、検査を実施したい場合は全額自己負担になってしまうのが現状です。
直腸のクラミジアや淋菌の遺伝子検査は一部の医療機関でしか行われていない現状を踏まえて、GMEにおいては実施が可能であるか検査精度などの検討を重ねた後、充分な精度で結果をお届け出来ることとなり、直腸検査を実施していますので性器、喉、直腸の全ての部位でクラミジアと淋菌の検査をしていただけます。
クラミジアや淋菌による直腸炎の場合には、性器の感染症の時と同様に無症状なことがほとんどです。その為、知らず知らずのうちに大切なパートナーに感染させてしまっています。
症状の有無で感染の判断ができないので、定期的に検査を実施し早期発見・早期治療を心掛ける必要があります。