GME医学検査研究所

総蛋白とは?その役割や基準値、改善方法を徹底解説!
【生活習慣病の知識vol.4】

総蛋白とは何か、どのような役割を果たしているのかご存じですか?

健康診断で「総蛋白の値が高い」「低い」といわれて不安に思われる方も多いでしょう。実際に、総蛋白の異常は体内で重要なサインを示すことがあります。この記事では、総蛋白の基準値や異常値の原因と対策について詳しく解説します。
この記事を読むことで、自分の健康状態を理解し、生活習慣の見直しに役立てることができるでしょう。さっそく、総蛋白についてみていきましょう。

総蛋白とは?役割と重要性を解説

総蛋白とは、血液中に含まれるすべてのたんぱく質の総量を指します。

主に「アルブミン」と「グロブリン」という2つのたんぱく質が含まれており、これらが血液中で重要な役割を果たしています。アルブミンは血液の浸透圧を維持し、栄養素やホルモンを体内に運搬します。グロブリンは免疫機能に関与し、感染防御や血液凝固に関わる重要なたんぱく質です。
総蛋白は、体内で以下のような重要な役割を果たしています。

1. 物質の運搬

アルブミンは、栄養素やホルモン、薬物などと結合し、各組織や細胞に届けます。これにより体全体の機能が適切に働きます。

2. 血液の浸透圧を維持

アルブミンは、血液と血管の外との間で水分のバランスを保つ「浸透圧」を維持します。浸透圧が崩れると、むくみ(浮腫)が発生することがあります。

3. 免疫のサポート

グロブリンは免疫機能をサポートする役割があり、細菌やウイルスなどの病原菌から体を守ります。炎症や感染症が発生した際には免疫反応を促進します。

4. 血液凝固

グロブリンには血液凝固因子が含まれており、怪我をした際に血液を固めて止血を助けます。これにより大量出血を防いで、体の自己修復をサポートします。

総蛋白の基準値とは?高い場合・低い場合の危険性

総蛋白の基準値は通常6.5〜7.9g/dLであり、これを超えたり下回ると病気の可能性があります。[注1]
8.5g/dL以上になると「高蛋白血症」と呼ばれ、慢性炎症や骨髄の異常が疑われます。一方で6.0g/dL未満になると「低蛋白血症」とされ、肝機能低下や腎疾患が原因と考えられます。

総蛋白が高い 8.5 g/dL以上の場合は「高蛋白血症」と呼ばれ、体内でたんぱく質が過剰になっているか、何らかの病的な変化が生じている可能性があります。
総蛋白が高い場合は、慢性的な炎症、感染症、骨髄の病気が関係していることがあります。特にグロブリンが増加している場合は免疫系の異常を示唆します。
総蛋白が低い 6.0 g/dL未満の場合は「低蛋白血症」と呼ばれ、体内のたんぱく質が不足している可能性があります。
総蛋白の値が低い場合、肝機能低下、腎疾患、栄養不足、消化不良などが疑われます。特にアルブミンの低下は、栄養失調や肝硬変など深刻な状態を示すことがあり、注意が必要です。

総蛋白の基準値は、基本的に性別による大きな差はありませんが、年齢により変化があります。新生児・幼児の総蛋白の値は成人よりも低めです。これは肝機能や体内のたんぱく質合成機能がまだ完全に成熟していないためです。
また、加齢による消化吸収能力の衰えなどにより、高齢者では総蛋白の値が低下する傾向にあります。

[注1]参考)日本人間ドック・予防医療学会https://www.ningen-dock.jp/public_method/#pm11

総蛋白が高い場合の原因と症状

総蛋白の値が8.5g/dLを超えるような状態を「高蛋白血症」と呼びます。

◎総蛋白が高くなる原因

脱水症状

水分が不足することで、血液中の蛋白濃度が上昇します。

慢性炎症

体内で長期間続く炎症が原因となることがあります。

感染症

細菌やウイルスに対する免疫反応が強くなると、免疫たんぱく質(グロブリン)の増加が見られます。

多発性骨髄腫

骨髄におけるがんの一種で、異常なたんぱく質(グロブリン)が増加します。

◎主な症状

このような症状が見られる場合には、慢性の病気や血液の異常が関係していることがあるため、医師の診察を受けることをおすすめします。

1.脱水症状 ・口の乾き
・尿の減少
・ふらつき
・倦怠感
・頭痛
2.慢性炎症や感染症の症状 ・長期にわたる関節の痛み、腫れ(関節リウマチや膠原病などの場合)
・発熱や体のだるさ
・筋肉痛や全身の倦怠感
3.血液疾患の症状 ・骨の痛み(特に背骨や胸のあたり)
・体重減少
・貧血による疲労感や息切れ
・免疫力の低下

総蛋白が低い場合の原因と症状

総蛋白の値が6.0 g/dLを下回ると「低蛋白血症」となり、さまざまな症状を引き起こします。低蛋白血症は、栄養不足、肝臓や腎臓の病気が原因で発生することが多いです。

◎総蛋白が低くなる原因

栄養不足

たんぱく質やカロリーが不足すると、とくにアルブミンが低下します。

肝臓の疾患

アルブミンは肝臓で生成されるため、肝機能が低下すると総蛋白が低下します。

腎臓の疾患

腎臓でのたんぱく質の漏れが原因で尿中にたんぱく質が流出してしまい、血中の蛋白質量が低下します。

消化吸収不良

栄養素の吸収障害があると、必要なたんぱく質を十分に吸収できません。

◎主な症状

1.浮腫(むくみ) ・足の腫れ
・顔やまぶたのむくみ
・腹水(腹部が膨らむ)
2.疲労感や倦怠感 ・全身の倦怠感
・活動が制限されるほどの疲労感
3.筋肉の減少や弱化 ・筋肉の萎縮
・筋力低下や動きが鈍くなる
4.免疫力の低下 ・風邪や感染症にかかりやすくなる
・怪我や傷が治りにくくなる
5.消化器症状 ・食欲不振
・体重減少
・下痢や消化不良

総蛋白が危険値だとどんな病気が考えられる?

総蛋白の値が危険値だと肝臓や腎臓、免疫系などの病気が考えられます。
以下では、総蛋白が高すぎる場合(高蛋白血症)と低すぎる場合(低蛋白血症)に、それぞれ考えられる病気について解説します。

1.総蛋白が高い場合(高蛋白血症)に考えられる病気

総蛋白が異常に高い状態は、通常、慢性的な病気や特定の病的状態に関連しています。

脱水症 脱水は、水分摂取量の減少や水分喪失量の増加により起こります。口の渇きや倦怠感、立ちくらみなどの症状を訴えることが多いです。
多発性骨髄腫 骨髄内で異常な形のたんぱく質が過剰に産生される血液のがんです。
骨の痛みや骨折、貧血、感染症にかかりやすいなどが特徴です。治療を行わないと骨がもろくなり、腎不全などが進行します。最終的には生命に関わることがあります。
関節リウマチ 免疫の異常により関節に炎症が起こる自己免疫疾患です。進行すると関節の変形や機能障害を生じます。
全身性エリテマトーデス 自己免疫疾患により全身の様々な部位に炎症が起こり、発熱、倦怠感、関節痛、皮膚症状、内臓疾患などを引き起こす病気です。

2.総蛋白が低い場合(低蛋白血症)に考えられる病気

総蛋白が異常に低い状態は、特に栄養不足や臓器の機能不全が関連しており、以下のような疾患が考えられます。

栄養失調 たんぱく質が不足すると、体全体の組織や臓器が正常に機能しなくなります。
重度の栄養失調は、体力や免疫力の極端な低下を招き、感染症や臓器不全を引き起こす可能性があります。
肝硬変や肝不全 肝硬変や肝不全が進行すると、アルブミンなどのたんぱく質を十分に生成できなくなり、血中の総蛋白が低下します。
放置すると、黄疸、腹水、出血傾向、意識障害などが現れ、最終的には命に関わる状態に進行します。
ネフローゼ症候群 腎臓の機能が低下し、尿中に大量のたんぱく質が漏れ出す状態です。
これにより、血中の総蛋白が大幅に低下します。放置すると、むくみが悪化して腎不全に至る可能性が高まります。また、長期的には高血圧や心血管疾患のリスクが増大します。
消化吸収不良症候群 消化管の疾患や手術後に、食物から十分なたんぱく質や栄養素が吸収できなくなる病気です。
栄養不足が続くことで、全身の機能が低下し、体重減少や筋力低下、免疫不全を引き起こします。放置すると命に関わる場合もあります。
免疫力の低下による感染症リスク 総蛋白が低下すると免疫機能が低下し、感染症にかかりやすくなります。風邪や肺炎などの軽い感染症が悪化し、敗血症や重度の感染症を引き起こす可能性があります。
心不全 低蛋白血症によるむくみが心臓に負担をかけ、心不全を引き起こす可能性があります。特にアルブミンが低下した場合、全身の血液循環が悪化し、心臓に負担がかかります。
放置すると、心臓の機能不全が進行し、突然死や重篤な心臓疾患を引き起こす危険性があります。

自宅でできる総蛋白数値の改善方法

総蛋白の正常な数値を維持するためには、バランスの取れた食事、適度な運動、良質な睡眠、そしてストレスをためない生活習慣が大切です。
これらの習慣を意識することで、体内のたんぱく質代謝が正常に保たれ、健康な体を維持することができます。
さらに定期的な健康チェックを通じて、自分の体の状態を把握し、必要に応じて生活習慣を改善していくことも重要です。日々の小さな積み重ねが、長期的な健康につながります。

1. バランスの取れた食事

体内のたんぱく質は、食事から摂取するアミノ酸を元に作られます。そのため、良質なたんぱく質を含む食品を意識して摂取しましょう。1日に必要なたんぱく質の量は、成人で体重1kgあたり約1gが目安とされています。[注2]

◎良質なたんぱく質を含む食品を摂取する

肉類(鶏肉、牛肉、豚肉) 高品質なたんぱく質源で、アミノ酸バランスが良いです。
魚介類 特に青魚は、たんぱく質に加え、良質な脂肪酸も含まれます。
栄養価の高い完全食とも言われ、優れたたんぱく質源です。
大豆製品(豆腐、納豆、豆乳) 植物性たんぱく質で、脂質が少ないのが特徴です。
乳製品(牛乳、ヨーグルト、チーズ) カルシウムと共にたんぱく質が豊富です。

たんぱく質の合成や利用には、ビタミンB群や亜鉛、鉄などのミネラルが必要です。これらを十分に摂取することで、体内のたんぱく質代謝が効率よく行われます。

◎ビタミンとミネラルをバランスよく摂取する

ビタミンB群 豚肉、レバー、卵、魚
亜鉛 牡蠣、赤身の肉、チーズ
レバー、赤身肉、ほうれん草

2. 適度な運動

運動は筋肉の成長を促し、たんぱく質の需要を増やすため、体内のたんぱく質を効率的に利用することに役立ちます。

◎有酸素運動

ウォーキング、ジョギング、サイクリングなどは心肺機能を強化し、全身の代謝を向上させるため、たんぱく質の利用効率を高めます。

◎筋力トレーニング

スクワット、腕立て伏せ、ダンベルトレーニングなどを行い筋肉量を増やすことで、たんぱく質の需要が増え、身体がより多くのたんぱく質を効率的に使用するようになります。

3. 肝臓と腎臓の健康を保つ

総蛋白の数値は、肝臓や腎臓の機能にも密接に関係しています。これらの臓器は、たんぱく質の生成や処理を担っているため、健康を維持することが大切です。

◎アルコールの摂取を控える

過剰なアルコール摂取は肝機能を低下させます。適度な量にとどめましょう。

◎適切な水分補給

腎臓はたんぱく質を処理する役割を担っているため、腎臓の健康維持も重要です。十分な水分を摂取することで、腎臓への負担を軽減し、血液中のたんぱく質濃度を適切に保つことができます。

4. 睡眠とストレス管理

たんぱく質の合成や修復は主に睡眠中に行われるため、十分な睡眠をとることも大切です。

◎睡眠時間を確保する

毎日7〜9時間の睡眠を目指し、規則正しい睡眠習慣をつけることが大切です。

◎ストレスを溜めない

慢性的なストレスは体に負担をかけ、たんぱく質の代謝にも影響を与える可能性があります。ヨガや瞑想、趣味の活動を取り入れ、リラックスする時間を持つよう心掛けましょう。

5. 定期的な健康チェック

定期的に血液検査を受けることで、総蛋白の値が正常範囲にあるかを確認できます。異常が見つかった場合には早めに医師のアドバイスを受けましょう。

[注2]参考)日本人の食事摂取基準(2020年版)「日本人の食事摂取基準」策定検討会報告書https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf

定期的な検査で健康チェックをしましょう

総蛋白(TP)の値は、血液検査によって測定されます。
血液中に含まれるアルブミンやグロブリンなどのたんぱく質の総量を測定します。アルブミンとグロブリンの比率(A/G比)なども診断の参考にされることがあります。

医療機関で行われる血液検査では、腕の静脈から血液を採取します。通常は空腹状態(採血の前に8〜12時間の絶食)が求められることがありますが、総蛋白の検査自体は絶食を必須としない場合もあります。

総蛋白の測定は、物質の運搬や浸透圧の調整に関与する「アルブミン」、免疫機能や炎症反応に関連する「グロブリン」なども合わせて測定を行います。

総蛋白は、血液検査で簡単に測定することができ、肝臓や腎臓の健康状態、栄養状態、免疫機能の確認に役立ちます。異常が見つかった場合は、追加の検査を行い、根本的な原因を特定することが重要です。
定期的な血液検査を通じて、自分の健康状態を確認し、バランスの取れた食生活や生活習慣を心掛けることが、健康を維持するための鍵となります。

総蛋白について
たんぱく質に含まれるアルブミンは物質やホルモンを体内に運搬します
グロブリンは免疫機能に関与しています
総蛋白の数値が異常値になってしまうと骨髄の異常または肝機能低下や腎疾患が疑われます
定期的に検査をする事と生活習慣の改善を心がけましょう