- ①抗菌薬に耐性をもった淋菌
- ②症状は淋菌と同様
- ③治療を疎かにすると耐性菌が増えてしまう
- ④治療後も検査をする事が大切
今までの淋菌と何が違うのかな?感染力が淋菌より強い?症状が激しい?など、人によって様々だと思います。今回は耳にすることが少ない、最近新たに出てきた淋菌『スーパー淋菌』についてご紹介したいと思います。
スーパー淋菌とは
さまざまな抗菌薬に耐性をもった淋菌(薬剤耐性淋菌)のことです。
淋菌の治療には、主にセフトリアキソンやスペクチノマイシンといった抗菌薬を用いて治療を行ってきました。ですが、近年これらの薬剤に耐性を持つ淋菌が出現してきており、セフトリアキソン等に耐性を持った淋菌を「スーパー淋菌」と呼んでいます。
薬剤耐性菌とは
淋菌を含めた微生物は、抗生物質(抗菌剤)に接触して自ら薬剤の耐性機能を獲得したり、外部から薬剤を不活化できる遺伝子を獲得すると、特定の薬剤に対して抵抗力(薬剤耐性)を持つようになり、薬剤が効かなくなったり、効きにくくなったりします。
こうした、薬剤に対する抵抗力を持った菌を薬剤耐性菌と呼びます。
スーパー淋菌の症状
上記で示した通り、スーパー淋菌は薬剤に耐性を持つ淋菌です。そのため症状に関しては淋菌感染症と同様となります。
【男性の場合】
◎淋菌性尿道炎
感染後2~7日の潜伏期間を経て、尿道炎である排尿痛や尿道分泌物が見られます。
・尿道のかゆみ
・排尿時の痛みや灼熱感
・黄色くどろどろした膿が多く出る
◎淋菌性精巣上体炎
淋菌性尿道炎が治療されないと、尿道内の淋菌が管内性に上行し、精巣上体炎を起こします。はじめは片側性ですが、治療されなければ両側性となり、治療後に無精子症を生じる場合があります。
・陰嚢の脹大
・陰嚢の疼痛
【女性の場合】
女性の場合は男性と比べて無症状例が多いため、潜伏期ははっきりとしていません。そのため、感染に気づかず、男性の淋菌感染症の感染源となります。
◎子宮頸管炎
・おりものの増加
・不正出血や下腹部痛
◎子宮内膜炎
・下腹部痛
・微熱
・不正出血
◎尿道炎・膀胱炎(子宮頸管炎と併発することもあります。)
・排尿痛
・排尿困難
◎骨盤内炎症性疾患
子宮付属器炎(卵管炎・卵巣炎)、骨盤腹膜炎の疾患は単独でも発症しますが、しばしば併発します。
・下腹部痛
・発熱
・不正出血
耐性菌の発生メカニズム
下記のような耐性機構は、細菌が元々持っている場合と、他の細菌から譲り受けたり抗菌薬の投与により誘導されたりして獲得する場合があります。
・細菌自体を覆っている膜を変化させて、薬が入ってきづらくする
・細菌に入ってきた毒を外に汲み出す
・細菌の中で抗菌剤が作用する部分を変化させ、抗菌剤が入ってきても効果が出ないようにする
・細菌に届く前に化学反応で分解してしまう
・バイオフィルムで細菌自体を覆い、薬から身を守る
人の身体には多くの細菌が住み着いており、お互いのバランスを保つことで病気を引き起こさずにいます。その中で耐性を獲得しようとする細菌も細々と生きています。
しかしある日突然、抗菌剤の投与によって一部の細菌が死滅したことで、抗菌剤に耐性を獲得しようとする細菌だけが生き残ることができるようになります。
そのまま抗菌剤を投与していれば生き残っていた細菌も死滅することができるのですが、症状がよくなったからと言って薬の服用を止めてしまったり、1日3回飲まなければいけない薬を1回しか飲まなかった等の中途半端な状態になると、抗菌剤が効かない細菌が増えてしまうことになります。
薬剤耐性菌を作らないためには
淋菌は薬剤に耐性を持ちやすい細菌と言われています。
薬剤耐性菌が増えてしまうと、現在の治療で主流となっている抗菌剤が効かなくなってしまうかもしれません。
そうならない為にも、治療の際には下記を守るようにしましょう。
①症状が収まったからと言って治療を中断せず、医師の指示通りに治療を行う
②治療後は検査を行い、陰性であることを確認する
医師の指示に従いしっかり治療することでスーパー淋菌の蔓延を防ぎましょう。
治療を途中で辞めてしまう・治療後の陰性確認の検査をしないなどで耐性菌は増えてしまいます
耐性菌を増やさないためにも医師の指示に従いしっかりと治療をしましょう