HTLV-1についてのまとめ
- ①HIVと同様に母子感染や性行為で感染する
- ②発症するまで症状が出ない
- ③白血病などを発症する恐れがある
日本全体で100万人ほどキャリアがいるとされているHTLV-1。以前は九州以南などの一部地域特有であるとも考えられていましたが、2022年12月現在は東京や大阪などの大都市でもHTLV-1キャリアが増えているといわれています。
HTLV-1は成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)発症のリスクとなりうる恐ろしいウイルスです。感染経路や発症する病気、予防方法などについて解説していきます。
HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス1型)はレトロウイルスというウイルスの一種です。
レトロウイルスとは『基本的には一度感染すると生涯感染が持続するウイルス』で、他のレトロウイルスとして有名なウイルスにHIVがあります。
HIVは以前HTLV-3と呼ばれていたこともあるほどです。
リンパ球に潜んでいるHTLV-1が感染を起こします。
HTLV-1はリンパ球の含まれる母乳、精液、膣分泌液、血液を介して感染するため、HIVと同じように母子感染や性行為で感染します。
一度感染すると体内のTリンパ球の中に持続感染(キャリア)します。そして10年以上の経過と共に難治性の血液がんの一つ『成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)』などを発症したりします。
持続感染中は症状があまりないため、感染に気が付きにくいことも特徴です。
HTLV-1と関連する比較的有名な病気としては下記のような疾患があります。
その名の通り血液がんの白血病・リンパ腫の一種で進行すると予後不良
進行すると歩けなくなったりする
目が見えにくくなったりする
それ以外にもHTLV-1と関連があるのかどうかはっきりしないような疾患も多くあります。
例えば最近の論文では、HTLV-1感染者の方が非感染者よりも死亡リスクが高い(わかりやすく言うと寿命が短い)とする報告があります(※1)。
※1 出典:Lancet Infect Dis 2020 Vol. 20 Issue 1 Pages 133-143
そのデータベースで、HTLV-1感染者に患者さんが多いとされた疾患は非常に多岐にわたり、下記のような疾患とHTLV-1が関連しているのかもしれないということになります。
HTLV-1はATLやHAMなど難治の疾患を発症しますが、その一方で実際に発症するのは一部であったり、発症を予防することができない為に、HTLV-1が陽性であるとわかってもあまり対応することがないとして、妊婦や献血者以外ではその感染の有無を検査することはありませんでした。
しかし、前述のように色々な疾患のリスクが高くなるとするとどうでしょうか。
一度調べておくと何か異常が出てきた時にHTLV-1に関連した病気の診断が付きやすいメリットがあるでしょう。少しの採血で検査できるのならと感じられる方も多いのではないでしょうか。
また、HTLV-1は母子感染が着目されてきましたが、母子感染のコントロールが行政でも進められる一方で、性行為での感染(水平感染)に関してはほとんど対策が行われてきませんでした。水平感染と言いますと現在ではほとんど性感染になります。
性感染症のリスクの高い方はHTLV-1感染のリスクも高くなりますが、これまで特にスクリーニング検査を勧められるようなことはなかったのではと思います。このコラムを読んでHTLV-1感染について心配になったり、検査をしてみたいということがありましたら、病院や保健所にて担当の先生に相談いただくことをおすすめいたします。
HTLV-1は母子感染や性行為によって感染します。
性行為の最初からコンドームを正しく使用することが大切です。
また抗HTLV-1抗体を測定することで、ATLの発症をより早期に診断し、水平感染のリスクに配慮して対応することが考えられています。
性行為の際は、最初からコンドームを正しく使用する。
※オーラルセックスもリスクがあります。
注射器、歯ブラシ、カミソリなどの共用はせず、他人の血液に直接触れないようにする。
抗HTLV-1抗体の検査を定期的に行う。
性行為の際は、最初からコンドームを正しく使用する。
※オーラルセックスもリスクがあります。
注射器、歯ブラシ、カミソリなどの共用はせず、他人の血液に直接触れないようにする。
抗HTLV-1抗体の検査を定期的に行う。