GME医学検査研究所

梅毒の感染経路と予防策とは?
初期症状と早期治療の重要性についても解説

梅毒は治療をしなければ治ることはありません

キスでも感染する可能性があるといわれる梅毒は、症状が現れても消えてしまうため、治ったと勘違いしてしまうケースがあります。ですが、梅毒は治療をしない限り治りません。今回のコラムでは梅毒についての解説や、梅毒を早めに治療をすることのメリットについて解説します。

なにをすると梅毒に感染するの?

梅毒の主な感染経路は、以下とされています。

  • 1.性行為

    オーラルセックスやアナルセックスを含めた性行為

  • 2.血液感染

    梅毒感染者からの輸血、臓器提供、注射針の共用

  • 3.母子感染

    梅毒に感染している母親から胎児への経胎盤感染

輸血や臓器提供、妊娠した際には検査を行うため、実際には性交渉によって感染することがほとんどとされています。

梅毒の病原体は、感染者の血液・精液・膣分泌液に多く含まれます。
また、性器の粘膜に形成される硬性下疳や全身の皮膚に現れる発疹といった梅毒の病変部は感染力が高く、そこから分泌される分泌液には多くの病原体が検出されます。そのため、口に病変部がある場合には、唾液を介して感染する恐れがあるのです。これが、梅毒がキスでもうつるといわれる要因なのです。
キスによって唾液を介して感染すると言うと、梅毒感染者の唾液に触れることで感染するのでは?と思うかもしれません。しかし、唾液がかかったり触れたりする飛沫感染によって感染することはありません。

また、公衆浴場やトイレの利用で感染することは状況によってはありえますが、確率としては非常に低いとされています。
考えられる状況としては、梅毒トレポネーマが含まれた体液がお風呂のイスや便座に付着していた場合、自身の性器と接触することで感染することが挙げられます。ただし、お風呂のイスは使用前にシャワーで洗い流すことで病原体を洗い流すことができ、感染確率を下げることができます。

梅毒にかかるとどんな初期症状がでる?

感染機会から1ヶ月前後で、性器や肛門・口などの感染した部分に、小豆大からエンドウ豆ほどの大きさの赤いしこりが現れます。小さくて痛みがないため気づかないことがあります。また、リンパ節の腫脹を伴うことが多いとされています。

これらの症状は、放置していると2~3週間で自然となくなりますが、これは治ったのではなく次の段階への潜伏期間なのです。

そして、1~3ヵ月すると感染は全身へ広がり、全身・手や足の裏に赤いぶつぶつがみられるようになりますが、他の病気と紛らわしかったりします。梅毒性バラ疹、丘疹性梅毒疹、扁平コンジローマはこの時期の典型的な症状です。
再発を繰り返しながら次の段階へと進行していきます。

なぜ梅毒は早めの治療が必要なの?

梅毒は、治療をしなければ治ることはありません。症状が消えたとしても、治療をしていないのであれば、体内に梅毒の病原体が残っているため、次の病期へと進行していきます。

感染していた場合、早期に治療を始めることで、次のようなメリットがあります。

  • ◎合併症のリスクを減らす

    梅毒が脳や脊髄などの神経系に影響を及ぼして、脳炎や脊髄炎または髄膜炎を引き起こすことがあります。また、心臓へ影響を与え、梅毒性心内膜炎や大動脈瘤を引き起こします。骨や関節に影響を及ぼして関節炎や骨炎を引き起こす恐れがあります。慢性的な痛みや関節の症状が現れることがあります。

  • ◎パートナーへの感染リスクを減らす

    先ほどもお伝えしましたが、梅毒は症状が現れたり消えたりしながら進行します。治療をせずに症状が消えたタイミングで「治った」と思い込んで、パートナーと性行為をすると精液や腟分泌液などの体液には病原体が存在するため、感染させてしまうリスクは充分にあります。そこで、早期に治療を始めることができれば、パートナーへ梅毒をうつすリスクを下げることができるのです。

  • ◎母子感染のリスクを減らす

    妊婦が梅毒に感染した場合には、胎盤を通じて胎児に感染することがあります。胎児に梅毒が感染した場合には、早産や死産になったり、生まれてきても先天梅毒として特徴的な皮膚症状が出現したり、難聴やHutchinson切歯などを引き起こします。そのため妊婦が梅毒に感染していると分かった段階で治療を開始することが望ましいです。

現在では、梅毒は抗生物質で治る病気です。治療が遅れるほど、治療薬を服用する期間が長くなります。感染していることが分かったら、早期に治療しましょう。

梅毒の予防に効果があること

冒頭に説明しましたが、梅毒の病原体は感染者の精液・膣分泌液といった体液中に多く含まれています。最も効果的な予防方法としては、性行為の際はコンドームを正しく使用して直接の接触を避けることです。また、血液や病変部にも病原体が含まれていることから、直接触れないようにすること、注射器や歯ブラシ・カミソリの共用はしないようにしましょう。

母子感染の対策として、妊娠初期に妊婦健診として梅毒検査を行っています。そのため、胎児への感染はほとんどみられなくなりましたが、近年では梅毒の流行に伴い先天梅毒の報告数も増加してきています。

リスク行為があったら検査を受けて異変をすぐに見つけることが理想ですが、定期的に検査を受けるようにして、感染をいち早く見つけましょう。

梅毒の早期治療について
梅毒は性行為や血液を媒介して感染し感染しても症状に気づきにくい性病です
放置すると合併症を発症したりパートナーに移してしまうリスクが上がります定期的な検査で早期発見をして早くに治療を行うことが大切です