HIV予防薬PrEPについてのまとめ
- ①HIV治療薬を感染する前に飲んでHIV感染を予防する方法
- ②HIV感染リスクの高い成人に自分でできる予防法としてお勧め
- ③デイリーPrEPとオンデマンドPrEPの二つの方法がある
- ④PrEP開始にあたっては検査が必要
HIV治療薬を感染する前に飲むと、HIVに感染しにくくなることが分かっており、海外ではHIV予防薬として認められています。
現在、HIVの予防を目的とした服用は日本では未承認のため、その使用は保険適応外の自由診療となります。
ここでは、そんなHIVの予防方PrEPがどんな人に推奨・処方されるのか、実際にPrEPを開始・継続する際に必要な検査について詳しく解説していきます。
この予防法は「HIVに感染(暴露)する前にお薬を飲むことで予防する」ということで暴露前予防内服(Pre-Exposure
Prophylaxis)の頭文字をとって「PrEP」と呼ばれています。
PrEPの効果は、決められたスケジュール通りにお薬を飲めば、性行為による感染確率を99%予防できます。
PrEPは性行為をしている全ての成人に対して情報提供の機会が与えられることが望ましく、以下のHIV感染リスクの高い成人に『自分でできる予防法』としてお勧めの方法です。
【HIV感染リスクが高い成人とは】
・コンドームを使用しない、肛門または腟性交の経験がある方
・過去にクラミジアや淋菌、梅毒に感染したことがある方
・注射薬物を使用している方
以下の項目に当てはまる方はPrEP適応外になる場合があります
【特別な配慮が必要な状況】
・妊娠や授乳が必要になった場合
・慢性B型肝炎の患者
・慢性腎臓病
・思春期の若年者
それではPrEPで服用するお薬はどんなものがあるのでしょう?
◆お薬の種類
現在日本で使われているPrEPのお薬は、以下の2種類あります。
①「ツルバダ」
(後発品のジェネリックはテンビルEMやリコビルEM)
②「デシコビ」
(後発品のジェネリックはタフェロEM)
◆お薬の費用
費用は月10万円前後で、後発品のジェネリックでは月1万円前後です。
◆お薬の副作用
副作用に関しては、吐き気、下痢、疲労、頭痛などが出ることがあります。稀に腎機能障害を引き起こしますので、腎機能障害のリスクがある方には使用できません。
(腎機能障害についてはデシコビの方がツルバダよりも引き起こしにくいと言われております)
◆お薬の有効性
また、デイリーPrEPでは、「ツルバダ」「デシコビ」どちらのお薬でも有効性が認められておりますが、オンデマンドPrEPは、「ツルバダ」とその後発品でしか有効性が認めらておりません。
◎B型肝炎ウイルスに感染中の方は、服用を中止すると肝炎が悪化する恐れがありますので、使用は推奨されません。
◎思春期の若者に対するPrEPの有効性と安全性に関するデータは十分ではありませんので、実施の可否は慎重に検討することをお勧めします。
◎現在ツルバダやデシコビの先発品や後発品以外の抗HIV薬でのPrEPについて推奨されておりません。
PrEPには二つの方法があるので、自分に合った方法を選びましょう。
①デイリーPrEP
1日1回1錠を毎日同じ時間に飲む方法です。
この方法は性別関係なく全ての方に効果が認められています。PrEPを終了したい時は最後の性行為から2日後までお薬を飲みます。
②オンデマンドPrEP
性行為の前後にお薬を飲む方法です。
性行為24時間(遅くとも2時間)前に2錠飲み、性行為後に前回お薬を飲んでから24時間空けて1錠、翌日(24時間後)にもう1錠を飲んで終了です。直腸に有効成分が届くまでに2時間かかると言われている為、性行為をする2時間前までにはお薬を飲みましょう。
なお、この方法で効果が認められている性行為は、肛門性交(アナルセックス)です。
ですので、このオンデマンドPrEPの予防法が使用できるのは、シスジェンダー男性及びホルモン療法を行っていないトランスジェンダー女性に限られています。
下の表では、デイリーPrEPとオンデマンドPrEPはどんな人が使えるのか確認できます。
PrEP開始にあたっては以下の検査が必要です。
特に、HIV・腎機能・B型肝炎ウイルス検査は必須となりますので開始前には必ず確認しましょう。
◆PrEP開始前の検査
・HIV感染の有無
・クラミジア、淋菌、梅毒などの性感染症の感染の有無
・HBV(B型肝炎ウイルス)、HCV(C型肝炎ウイルス)の感染の有無
・腎機能検査(血清クレアチニン検査)
・脂質代謝検査(体重や中性脂肪・コレステロール)※デシコビ服用者の方
また、PrEP服用中のフォロー検査は以下の検査が必要です。
腎機能検査は6ヶ月後と12ヶ月後に必ず必要となりますので、忘れずに検査を受けましょう。
◆PrEP開始後の定期検査
・HIV感染の有無
・クラミジア、淋菌、梅毒などの性感染症の感染の有無
・HBV(B型肝炎ウイルス)、HCV(C型肝炎ウイルス)の感染の有無
・腎機能検査(血清クレアチニン検査)
・脂質代謝検査(体重や中性脂肪・コレステロール)※デシコビ服用者の方
抗HIV薬を飲むPrEPで防げる病気はHIVだけです。他の性感染症には無防備になりますので、コンドームを使用するか、梅毒やクラミジア、淋菌などといった性感染症の検査を定期的に実施するようにしましょう。
PrEPは決められた時間に毎日服用することで効果が持続しますので、デイリーPrEPの場合毎日きちんと飲むことが大切です。オンデマンドPrEPも同様で、決められたスケジュールを守って正しく飲みましょう。
中途半端な飲み方だと期待した効果が得られませんので注意しましょう。