- ①尿酸とはプリン体が肝臓で分解されることによりできる老廃物
- ②尿酸値が高い状態が続くと痛風発作・結石・循環器疾患などのリスクがある
- ③男性のほうが高尿酸血症の罹患率が圧倒的に高い
- ④肥満改善やアルコール制限、定期的な検査を心がける
尿酸値が高くなると、痛風や腎臓病などのリスクが増すといわれていますが、尿酸とは一体どのような物質なのでしょうか?また、健康にどのような影響を与えるのでしょうか?
尿酸値が高い原因にはさまざまな要因があります。本記事では、尿酸値が上がる要因や、日常生活で無理なく尿酸値を下げるための方法についても詳しく解説します。尿酸について知り、健康維持や生活習慣の改善に役立てていきましょう。


尿酸とは?その基本的な役割と生成の仕組み

◎尿酸とは何なのか
尿酸とは、プリン体が肝臓で分解されることによりできる老廃物です。腎臓から尿として体外に排出されます。
プリン体は体や臓器を動かすためのエネルギー源を構成する一部分です。また、細胞内にある核酸という物質にもプリン体が使われています。そのため、エネルギー代謝や細胞の新陳代謝によりプリン体が発生します。また、動物や植物の細胞内にもプリン体が含まれているため、食べ物などからも摂取しています。
痛風・尿酸財団[注1]では、血漿中の尿酸の溶解度をもとに7㎎/dlまでを基準値としています。
https://www.tufu.or.jp/gout/gout2/61
尿酸値が健康に及ぼす影響とは?

◎尿酸値が高いことで発生するリスク
尿酸が高いだけでは自覚症状はないことが多いです。しかし、尿酸値が高い状態が続くと、排泄されない尿酸がやがて結晶化し、関節や足先、耳たぶなどにたまり、激痛を伴う炎症を引き起こします。これは痛風発作と呼ばれます。
また、結晶化した尿酸が尿管でたまると尿管結石、膀胱内でたまると膀胱結石となります。
痛風発作や結石がみられなかったとしても、尿酸値が高い状態が続けば、脳血管疾患や心臓病などの循環器疾患を引き起こすこともあります。
高尿酸血症の人は、高血糖や高血圧、脂質異常症、肥満などを併発することも多くなります。
◎尿酸値が低いことで発生するリスク
尿酸値が2.0㎎/dl以下の場合には、激しい運動後(無酸素運動)に急性腎不全を発症する頻度が高いことが分かっています。
低尿酸血症は遺伝子変異により腎臓での尿酸の排泄が増加していることが原因である場合が多いです。
尿酸値が高くなる要因について
尿酸値が高くなる要因としては、以下のことが考えられます。
・プリン体を多く含む食事の摂取
・ ストレス
・運動不足
・肥満
・アルコールの過剰摂取
・遺伝的要因
・腎機能の低下
・男女差

女性ホルモンが尿酸値をコントロールするので、男性のほうが高尿酸血症の罹患率が圧倒的に高いです。女性でも、閉経後など女性ホルモンが低下すると罹患率がやや増加します。
1986年から2016年の30年間で、痛風の患者数は全体で約4倍、男性に限れば約5倍の増加となっています。
これは、生活習慣の変化によるものと考えられます。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/gnamtsunyo/44/1/44_33/_pdf
尿酸値を下げるために効果的な方法とは?
◎食事療法
1.年齢や活動量、BMI や肥満の有無などを考慮した適正なエネルギー摂取量
肥満と尿酸値は比例することがわかっているため、肥満を解消することで尿酸値が低下することが期待できます。一日のエネルギー必要量を目安に、エネルギー摂取量をコントロールしていきましょう。
性別 | 男性 | 女性 | ||||
身体活動レベル | Ⅰ | Ⅱ | Ⅲ | Ⅰ | Ⅱ | Ⅲ |
18-29歳 | 2300 | 2650 | 3050 | 1700 | 2000 | 2300 |
30-49歳 | 2300 | 2700 | 3050 | 1750 | 2050 | 2350 |
50-64歳 | 2200 | 2600 | 2950 | 1650 | 1950 | 2250 |
65-74歳 | 2050 | 2400 | 2750 | 1550 | 1850 | 2100 |
75歳以上 | 1800 | 2100 | 1400 | 1650 |
[注2]推定エネルギー必要量(kcal/日)厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
身体活動レベル:
Ⅰ低い(自宅や施設にいてほとんど外出しない者、施設などで自立に近い状態で過ごしている者)
Ⅱ普通(自立している者)
Ⅲ高い
2.食材に含まれるプリン体の量
主な食材100gあたりに含まれるプリン体の量は以下の一覧のとおりです。
極めて多い(300mg以上) | 干し椎茸、焼き海苔、出汁の素、中華だし、鶏レバー、太刀魚、マイワシ、乾物の魚(ちりめんじゃこ、干しエビ、ニボシなど)、魚の白子、あん肝、サプリ(ビール酵母、スピリルナ、クロレラ、ローヤルゼリーなど)等 |
多い(200~300mg) | 高野豆腐、パセリ、わかめ、豚牛レバー、カツオ、マアジ、煎茶 等 |
中程度(100~200mg) | ブロッコリースプラウト、きくらげ、乾燥ひじき、オイスターソース、コンソメ、豚・牛・鶏肉・魚介類の大部分 等 |
少ない(50~100mg) | カリフラワー、ほうれん草、肉・魚介類の一部 等 |
極めて少ない(~50mg) | 穀類、卵、野菜、豆類、きのこ 等 |
[注3]高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版より抜粋
一覧では100g中に含有されるプリン体の量を示しました。一食で摂取する量は100gに満たないものも多いので、その点を考慮して、栄養バランスの良い食事摂取を心がけることが大切です。
3.アルコール飲料の制限
アルコール摂取量と痛風発症率には相関があることがわかっています。
1日飲酒量 | 12.5mg/day以下 | 12.6~37.4mg/day | 37.5mg/day以上 |
発症確率 | 1.2倍 | 1.6倍 | 2.6倍 |
4.水分の摂取
尿酸を排出させるために、水分摂取が大切です。腎機能に問題がある場合は、主治医と相談の上、適切な飲水量を守って摂取する必要があります。
5.乳製品の摂取
乳製品や牛乳に含まれるカゼインというタンパク質は、胃腸で分解されてアラニンに変わります。このアラニンは尿酸を排泄しやすくする効果があり、血中の尿酸値を下げます。
牛乳なら1日1杯以上、低脂肪ヨーグルトなら1週間に2杯(480ml)以上摂取することで、尿酸値が下がり、痛風予防に繋がります。
6.コーヒーの摂取
コーヒーの摂取は、尿酸値を変化させませんが、コーヒーのもつ「抗炎症作用」が、痛風発作を予防するのではないかと考えられています。デカフェでも効果がみられ、カフェインの影響は関係がなさそうです。
痛風予防には、コーヒーを1日2杯以上飲むと良いとされています。
しかし、コーヒーにはシュウ酸が含まれ、コーヒー摂取が多いと体内でシュウ酸が結晶化し、結石を作るリスクがあります。シュウ酸はカルシウムと一緒に摂取することで体内への吸収を抑える効果があります。
尿路結石を防ぐためにも、痛風発作を予防するためにも、コーヒーに牛乳を足して飲むことが理にかなっているといえます。
なお、糖分の摂取は生活習慣病のリスクを上げてしまいますので、コーヒーには砂糖を加えないことをお勧めします。
◎運動と尿酸値の関係
運動することはメタボリックシンドロームの解消に繋がり、尿酸値を下げる効果が期待できます。しかし、短時間に強度の高い無酸素運動をすると、逆に尿酸値が高くなります。尿酸値を下げるためには、普段より少し脈が早くなる程度の有酸素運動を行うことが効果的です。
ウォーキングやジョギング、ハイキングなどを、一回10分以上、一日合計30-60分行うと良いとされています。
運動前後の水分補給を忘れないようにしましょう。
◎尿酸を下げるためのサプリメント
アンセリン
カツオやマグロなどの回遊魚の筋肉に含まれる物質で、尿酸値をさげることが知られており、市販のサプリメントなどに加工され、販売されています。
アンセリンは、
・尿酸を作りすぎない
・過多になった尿酸を排泄しやすくさせる
という、2つの作用を持ちます。
キトサン
エビやカニなどの甲殻類に多く含まれ、プリン体の吸収を阻害します。結果として尿酸が生成されるのを防ぎます。
ルテオリン
セロリやブロッコリーなどの食用植物に含まれ、プリン体から尿酸への代謝を促す酵素の働きを阻害し、尿酸の産生を防ぎます。
◎薬物治療
尿酸値が8mg/dL以上あり、合併症や体調を考慮し、医師が必要と判断した場合、尿酸値を下げる薬物が処方されます。
尿酸値を下げる薬物には大きくニ種類に分けられます。
尿酸産生抑制薬:尿酸を作る働きを抑える(アロプリノール、フェブキソスタット、トピロキソスタット)
尿酸排泄促進薬:尿酸の排泄を促す(プロベネシド、ドチヌラド)
また、尿酸値は下がりませんが、尿中の結石を溶かしやすくし、尿路結石を予防するウラリットという薬もあります。
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf
[注3]出典)高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版
https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00476/
尿酸値を知るには?
1.病院・クリニック
腎臓病や痛風が疑われる症状がある場合は病院・クリニックを受診しましょう。この場合は、内科または泌尿器科などが受診先となります。
2.健康診断
現在とくに自覚症状がない場合は、年に一度か二度ある定期健康診断を受けましょう。会社勤めの方は会社の健康診断を、そうではない方は自治体の健康診断になります。
(会社が実施する被保険者対象の健康診断では検査項目に尿酸が含まれていますが、特定検診では尿酸は含まれていません。医師が必要と判断した場合に追加されることはあります)
3.郵送検査
自宅にいながら検査キットを購入して調べることができます。
自分の都合の良いタイミングで実施でき、誰かと対面することなく検査完了できます。
自覚症状のない人の場合は、1(場合によっては2も含む)を除く方法での定期検査が選択できます。定期的に尿酸値を測定することは、腎臓病や痛風予防の意識を高めるだけでなく、病気を早期に発見して治療を開始することで症状の悪化や合併症を防ぐことが可能となります。


数値が高い状態が続くと痛風発作や尿管結石だけでなく脳血管疾患や心臓病の原因にもなりえます
肥満の解消やアルコール制限などを行い定期検査で数値を見ながら改善をしていきましょう