- ①人の体は病原体の侵入を防ぐ常在菌と共存している
- ②感染症の原因となる病原体はさまざまな種類がある
- ③性感染症は主に性行為によって感染する
- ④病原体は体内に侵入し、潜伏期間を経て症状を発症する
新型コロナウイルスの感染拡大は誰もが感染症を身近に感じ、対策をする必要がありました。
また、梅毒の流行によって、性感染症を身近に感じる様になった若い方も多いと思います。
ウイルスや細菌など感染症によって様々な対策があるため、何が合っているのか迷ってしまうかもしれません。
自ら正しく対策できるように基礎知識を身に着けましょう!
まずは感染症の原因となる病原体から詳しく解説していきます。
微生物と共存する人の体
人は病原体の侵入を防ぐ役割をしてくれる微生物とともに協調しながら生きています。
皮膚、口や鼻の中、のど、気管、胃腸、泌尿器官などに多く微生物(常在菌)は存在しています。
腸内に生息して、腸内環境を整える役割をするビフィズス菌や乳酸菌を聞いたことがあるのではないでしょうか。また、皮膚には肌の調子を整える常在菌が生息しています。
このように私たちは常在菌と共存しているのです。
基本的には常在菌は人体に害を与えることはないのですが、暴飲暴食や睡眠不足、ストレスや疲労などの乱れた生活習慣によって体の免疫機能が低下し抵抗力が下がった時に、この常在菌の一部が異常発生し、体内の細菌バランスが乱れることで感染症を発症させることもあるので注意が必要です。
様々な感染症の原因となる病原体
人の体の外から体内に侵入して病気を引きおこす『病原体』は、どのような種類があるのか見ていきましょう。[注1][注2]
●ウイルス
ウイルスは10~400nm(ナノメートル:100 万分の1mm)ほどで、電子顕微鏡でないと確認できないほどのとても小さな感染性微生物です。
自分だけでは増殖する能力がないため、人(他の生物)の細胞の中に入り込んで増殖します。
ノロウイルス、ロタウイルス、インフルエンザウイルス、アデノウイルス、新型コロナウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルスなど
感染性胃腸炎、インフルエンザ、かぜ症候群、麻疹、風疹、水痘、帯状疱疹など
●細菌
細菌は1~5μm(マイクロメートル:1000 分の1mm)と、顕微鏡でようやく見える程度のごく小さな、核をもたない単細胞生物です。
栄養分さえあれば自分の力で増殖していくことができます。人の体内で細胞分裂により増殖していき細胞内に毒素を出して侵入、損傷します。
ブドウ球菌、大腸菌、サルモネラ菌、コレラ菌、赤痢菌、炭疽菌、結核菌、ボツリヌス菌、破傷風菌、レンサ球菌など
感染性胃腸炎、腸管出血性大腸菌(O157)感染症、結核、破傷風、敗血症、中耳炎など
●真菌
真菌とはカビや、酵母、キノコも含む微生物で、土壌や水、空気中に生息して有機物から栄養を得ています。その大きさは、顕微鏡でようやく見えるものから肉眼で容易に見えるものまで様々です。
人の体内に入り細胞につくと菌糸が枝分かれして成長していきます。
白癬菌、アスペルギルスなど
白癬(水虫)、アスペルギルス症など
●寄生虫
寄生虫とは、人や動物などの他の生物(宿主)の体表や体内にすみついて、宿主の栄養素を奪い生きている生物です。単一の細胞のみで構成される原虫(単細胞)と、多数の細胞からできていて内臓機能も有する蠕虫(多細胞)の2つに分類されます。
その他に、体表に寄生し感染を媒介する昆虫(シラミ、ダニなど)外部寄生虫も存在します。
マラリア、トキソプラズマなど
回虫、蟯虫、アニキサス、エキノコックスなど
ダニ、蚊、ノミ、シラミなど
[注2]感染症の基礎知識 病原体:寄生虫とは | 大幸薬品 https://www.seirogan.co.jp/fun/infection-control/virus/parasite.html
性感染症を引き起こす病原体一覧
性感染症とは性行為によって感染する病気です
性器の接触による性交だけではなく、オーラルセックスやアナルセックスなどにより、性器、泌尿器、肛門、口腔などに感染します。
病原体種類 | おもな病原体 | おもな性感染症 |
ウイルス | HIV(ヒト免疫不全ウイルス)・6型、11型ヒトパピローマウイルス(HPV)・肝炎ウィルス・単純ヘルペスウイルスなど | エイズ・尖圭コンジローマ・B型肝炎・C型肝炎・ヘルペスなど |
細菌 | クラミジア・淋菌・梅毒トレポネーマ・マイコプラズマ・軟性下疳菌など | クラミジア感染症・淋菌感染症(淋病)・梅毒感染症・非クラミジア性非淋菌性尿道炎・軟性下疳など |
真菌 | カンジダ | カンジダ症 |
寄生虫 | 膣トリコモナス原虫・赤痢アメーバ・ケジラミなど | 腟トリコモナス症・赤痢アメーバ症・ケジラミ症など |
日本でもっとも感染者が多いクラミジアを例にあげると、自覚症状が殆どない為、感染に気づかずパートナーへ移し感染をさらに広げてしまう可能性があります。
コンドームは避妊だけではなく性感染症予防にも効果が高いので、性行為の際には必ず使用するようにすること。
また、定期的な性感染症の検査で自身とパートナーのセクシャルヘルスを促進しましょう。
体内で感染症を発症するしくみ
感染症とは『病気を引き起こす病原体』が体内に侵入し、増殖しながら潜伏期間を経て、何らかの症状を引き起こし発症します。
発症までの潜伏期間は病原体によって様々です。たとえばHIVウイルスに感染すると、インフルエンザにかかったような高熱や筋肉痛などの症状が出るため感染に気付かないことが多く、そのまま数年から十数年の潜伏期間に入り、エイズを発症します。エイズを発症すると、免疫機能が低下して様々な病気に罹りやすくなります。
また、病原体の感染力と身体の抵抗力や免疫力のバランスによって、病原体に感染しても症状が出る場合と出ない場合があります。
病原体に感染していても症状が出ないことを『不顕性感染』といい、症状が無いのに検査で病原体が検出されることを『無症状病原体保有者(キャリア)』といいます。[注3]
このように、自分に症状が無いのに感染している場合もあります。気付かずに感染を拡大させないためにも定期的な検査を受診しましょう。
次回の【感染症の基礎知識】は感染経路について解説します。